■「基本的信頼感」は赤ちゃん時代につくられる 赤ちゃんはお腹がすいたり、飽きたり、不愉快だったりすると、周囲の状況などお構いなしに泣き叫びます。泣くことで、自分の気持ちを表しているのです。
一昔前の育児論では、「
抱き癖がつくから、赤ちゃんが泣いてもすぐに抱っこしないで」が常識でした。
「泣くたびに抱っこすると、赤ちゃんは抱っこを求めて甘え続け、わがままになる」というのがその理由。
泣いても取り合わなければ、たしかに赤ちゃんは大人しくなります。
しかし、これは泣くことで、自分の感情を表現することをあきらめてしまうからです。
このように、泣いたり笑ったりをあまりせず、感情表現の乏しい赤ちゃんを「サイレント・ベビー」と言います。
赤ちゃん時代は育てやすいのですが、そのまま成長すると人間関係をうまく築けない人になってしまう可能性があります。
発達心理学者の
エリクソンは、「基本的信頼感」は赤ちゃん時代につくられる、と説きました。
基本的信頼感とは、「人も世界も、自分自身も信頼することができる」という感覚。人間が初めて獲得する心の発達課題です。
この基本的信頼感がなければ、家族も信頼できず、人とかかわりあって生活することができません。
自分が生きている世の中も信頼できないので、いつでも不安でいっぱいです。
また、自分自身も信じられないので、生きていく自信がわいてこないのです。
■「この世界で安心して生きられる」という感覚 この基本的信頼感は、主たる養育者、多くの場合、母親との関係の中で築かれます。
いつもそばにいて、自分の面倒を見てくれる。
泣いて不快感を示すと、「お腹すいているの? 眠いの?」と気にかけて、欲求に応えてくれる。
さびしいときには抱っこをして、微笑みかけたりやさしくなでたりしてくれる――このように、自分の気持ちに応えてくれる養育者を心から信頼すると、「この人がいるから、この世界で生きていける」という安心感をつかむことができます。
ところが、養育者が泣いている赤ちゃんを放置し続けたり、泣くたびに怒鳴ったり、叩いたりしたら、どうなるでしょう?
赤ちゃんは人を信じられず、世の中も恐ろしいものに感じ、「素直な気持ち」を表現できなくなってしまいます。
赤ちゃん時代の「育てやすさ」とは裏腹に、子どもの心には「生きにくさ」が残ってしまうのです。
■基本的信頼感は、その後の人生のベースとなる 泣きぐずる赤ちゃんとのつきあいは、しんどいもの。
でも、「いま赤ちゃんの要求に応えておけば、後々の子育てが楽になる」と考えれば、少し気持ちが楽になるのではないでしょうか?
基本的信頼感を持つ子は、そうでない子よりスムーズに友達の輪に入っていけますし、集団生活にも溶け込み、自分から自立に近づいていきます。
そうでない子は、親の心配が絶えず、いつまでも面倒をかけることになります。
ちなみに、ワーキングマザーには産後1年間の育児休業がありますが、この期間、お母さんがしっかり休んで赤ちゃんと密着して生活することは、子どもの心理的発達にとても大きな意味があるのです。
とはいえ、早めに職場復帰をしたとしても、お母さんに代わる養育者(保育士など)との間で、しっかりした信頼関係を築けるなら、大丈夫です。
ただし、代わりとなる養育者は、お母さん自身が信頼できる人を選ぶこと。
たっぷり「マザーリング」(お母さんのような愛情とスキンシップで接すること)をしてもらえるか、赤ちゃんがその人と一緒にいると安心するか、こうした点をよく見極めることも大切です。
基本的信頼感は、人間が他者との関係で最初に築く心の「土台」。
人は皆、この信頼感をベースにして人生を築いていくのですから、赤ちゃんとの間でしっかりと信頼関係を築いていきましょう。
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